阪神電車の神戸三宮駅では、かねて可動式ホーム柵の整備が進められてきましたが、2021年の2月11日の初発電車から1・3番線で供用が開始されました。
ホーム上の安全対策
国土交通省が中心となり、ホーム上の安全対策(バリアフリー化)が全国規模で進められています。安全対策の一つとしてホームドアの整備が進められており、乗降人員が一日あたり10万人を超える駅では2020年度までにホームドアを原則として設置することになっています。阪神電車では、神戸三宮駅と大阪梅田駅の2駅が一日10万人以上の基準に達しています(2019年度)。
ホーム上の安全対策としてはホームドアの整備のほか、目の不自由な方がホームの内側と外側を区別できるようにする内方線付き点状ブロック、頭端駅においては固定柵の整備が進められています。内方線付き点状ブロックは阪神電車の全駅で整備が完了していて、固定柵についても頭端部を有するすべての駅で整備が既にされています。
ホームドアの整備
神戸三宮駅1・3番線
阪神電車では、相互直通運転によって阪神だけでなく山陽と近鉄の車両も使用されています。阪神と山陽の車両は1両の長さがおおよそ19mで出入口が3つである一方、近鉄の一般車両は1両の長さが約21mで出入口が4つとなっていて、阪神・山陽と近鉄では車両の仕様が大きく異なります。
神戸三宮駅では、1・3番線には阪神と山陽の車両が停車する一方、2番線には阪神と近鉄の車両が停車するダイヤが組まれています。ホームドアの整備が始まった段階では、車両規格の大きく異る近鉄車両と阪神車両の両方に対応させることが技術的に困難であったため、車両規格がおおよそ同じ阪神車と山陽車が停車する1・3番線でホームドアの整備が始まりました。
神戸三宮駅のホームドア整備においては、国、兵庫県、神戸市より支給される補助金が活用されています。近畿運輸局と兵庫県、神戸市、阪神電車による「神戸三宮駅バリアフリー化協議会」が役割を果たします。
今後のホームドア整備
阪神と近鉄の車両の両方に対応したホームドアの整備が「昇降ロープ式ホーム柵」によって技術的に可能となったため、2番線のホーム柵の設置に向けて工事がすでに始まっています。現在では、ホームの補強が進められている段階です。
大阪梅田駅では駅改良工事が進められていて、工事の進展に合わせて可動式ホーム柵が設置されます。諸般の事情から工程が変更され、整備時期が2021~2023年度に延期されました。
神戸三宮駅の可動式ホーム柵(1・3番線)
ホームドアが整備される駅では、車両が駅に入線する際にブレーキ扱いをコンピュータにまかせることによって停止位置を一定させる「定位置停止装置(TASC)」が設置される場合もありますが、阪神電車ではそうした装置は設置されていません。そのため、停車時の運転操縦は人間の運転士が担当することとなり、停止位置が列車ごとに前後することを考慮する必要があります。
神戸三宮駅に設置された可動式ホーム柵は、停止精度を考慮して開口幅の大きいものとなっています。ホーム幅員に余裕のある西側部分では2重引戸に、幅員に余裕のない1番線の東改札エスカレーター以東では筐体を薄くできる1重の引戸になっています。
設置から供用開始まで
プラットホームの縁端部には、車両との間にできる隙間を減らす「櫛状ゴム」が設置されました。櫛状ゴムの設置にあたっては、既存のホーム先端タイルに切り欠きが入れられました。
供用前(1月)の様子
可動式ホーム柵の供用開始後の動線を示した点状ブロックは、1月の時点では覆いが被されていました。また、表示器が動作している様子が見られました。
2/11 供用開始直後の様子
可動式ホーム柵の供用開始時点で櫛状ゴムの設置が終わっていない箇所では、足元への注意喚起が筐体に貼り付けられていました。
各種表示の様子です。
▼列車が停止している間は「止」が点灯し、かつホーム柵が開扉状態であれば「開」が、閉扉状態であれば「閉」が点灯する
▼制御部の表示灯 一部の扉のみ開く3・4連含め、開いた扉のみ緑ランプが消え、完全に開いた状態になれば赤ランプが点灯する
文責:ぐんじょう、snowlavit
写真:snowlavit、ぐんじょう
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