阪神・山陽・阪急3社のATSの仕様の背景には、神戸高速線の存在があります。神戸高速線は各社の列車が乗り入れるとともに、それを介した直通運転を可能にする路線です。
3社は神戸高速線を介した直通運転を始めるにあたり、ATSの方向性や仕様を決める協議を実施し、その結果として最低限の共通規格が制定され 、各社はその共通規格を満たすATSシステムを独自に開発することとなりました。
完全に同一仕様のATSとはせず個別開発としたのは、各社の独自方針や設計思想を追求する余地を残すためです。ただし、規格は一つですから車載機器は一セットで済みます。
ここで言う共通規格とは、照査速度と一対一に対応するATSコードのことです。ATS信号波の変調周波数を変えることよってATSコードが成り立っています。
・ATS信号波(搬送周波数は1920Hz)
制限速度 | 変調周波数 |
110Km/hなど | 15Hz |
70Km/h | 20Hz |
50Km/h | 40Hz |
30Km/h | 80Hz |
20Km/h | 30Hz |
0Km/h | 0Hz |
各社はATSコードを共有しながらも、コードの送出の仕方で独自性を出しています。
一方、ATSコードが共通化されているので車両側の装置は一つで対応できるため、各社の車両は自在に他社線に乗り入れることができます。
仕組み
3社のATSは「高周波連続誘導階段制御方式」です、などといっても説明にはなりませんよね。
先程ご紹介したATS信号は、基本的にレールに直接、或いはレール側面に添わせた「ループ線」に送出されます。
ATS信号は速度情報指令的性格を持つわけで、それを絶え間なく受信して初めて列車は走行できるようになります。
もし、ATS信号に対応する制限速度を超えてしまえば”ATSブレーキ’が動作します。
制限速度とATS信号が一対一対応していることは押さえておいてください。
ATS信号(搬送周波数は1920Hz)
制限速度 | ATS信号(の変調周波数) |
110Km/hなど | 15Hz |
70Km/h | 20Hz |
50Km/h | 40Hz |
30Km/h | 80Hz |
20Km/h | 30Hz |
0Km/h | 0 Hz |
高周波連続誘導階段制御方式と小難しく表せるわけですが、ここで言う「連続」とは何でしょう。
“連続”の反対語が“点”ということもあり、点制御の対比として考えた方が分かりやすいかもしれません。
点制御は、線路上に設けられた言わばチェックポイントにおいてだけで速度情報を受け渡すことによりATSとしての速度制御が実現します。そして、そのチェックポイントを点として表現します。
一方、連続制御は主としてレールに絶え間なくATS信号を垂れ流し、車両もまたこれを拾い続けて速度制御が実現します。速度情報はリアルタイムで車両に伝わり続け、連続制御となります。
実際、阪神 ATSでは、ATS信号をたった0.5秒間でも受信できなければ即座にATSブレーキが動作します。絶え間なく速度情報が伝わっていますよね。
5段階のATS信号が時と場合に応じて送信されるわけですが、そこらへんを第三回以降で説明しています。下の一覧からどうぞ。