3011形以来の大型車において車両の床下機器の配置や構成が大きく変わるタイミングは幾度かありました。その過程の中で機能が減り、最終的には消滅した機器箱として“高圧ヒューズ箱”があります。
高圧ヒューズ箱には何が納められているか
少し乱暴かもしれませんが、床下において“高圧”といえば1500Vと考えて差し支えないでしょう。
高圧ヒューズ箱は“高圧”と名の付くだけあって、名前を聞くだけで1500Vの流れるヒューズが中身に入っているのだということは少なくとも連想することができます(直流高圧補助回路におけるヒューズと一発で書きたいのが本音)。
実際の高圧ヒューズ箱の中身としては、コンプレッサ、ヒーター、電動発電機の3つの回路に対する主スイッチ並びにヒューズであり、さらにその主スイッチを操作するための“ジスコン棒”も納められていました。
ジスコン棒は絶縁性に優れており、高圧の流れうるスイッチを感電することなく操作するためのものです。
さておき、高圧ヒューズ箱には先に述べたように3つの回路の主スイッチ並びにヒューズが収められています。裏を返せばコンプレッサーもヒーターも電動発電機も1500Vで動いているということであり、そのことがここからの重要なポイントになります。
冷房化
7001・7101形と7801・7901形3次車からなる編成の登場を皮切りに冷房車の導入が進められ、その後に新造される車両はもとより、然るべき既存の車両も冷房化されました。
冷房装置の電源は電動発電機からの出力に由来するものですが、冷房装置は電気の消費が激しいため、それを動作させるには非冷房車と比べるととても大きな容量の電動発電機を設置せざるをえません。
それゆえ、電動発電機(MG)のヒューズも容量の大きなものとなり、それに伴って
“高圧ヒューズ箱”から 独立する形で“MGヒューズ箱”が新設されました。
8000系
8000系では、車内に設置されるヒーターが従来の1500Vの直流電源によるものから低圧電源によるものへと変わりました。客室内に設置されているシーズワイヤー式のヒーターは交流190V、乗務員室内に設置されている温風式のものは交流110Vによるものでいずれも低圧電源によるものです。
5500系
8000系までの車両に設置されているコンプレッサーは直流1500Vの直流モーターを駆動力とするものですが、5500系からは低圧の交流電源による誘導電動機(IM)駆動のコンプレッサーとなっています。コンプレッサーも低圧電源に変わりました。
3つの回路
本文冒頭で示した通り、もともとは電動発電機、ヒーター、コンプレッサー回路の主スイッチならびにヒューズが“高圧ヒューズ箱”に収められていました。しかし、MGヒューズ箱の独立や、高圧回路から低圧回路への変更が進み……あれれ?高圧ヒューズ箱を作る意味なくなったやん!
はい、そうです。もちろんのこと5500系では高圧ヒューズ箱が廃止されました。では、以前は高圧ヒューズ箱に収められていたジスコン棒はどこへ収納されるようになったのでしょうか。
ジスコン棒箱がなんと新設されたのです。
箱一つを眺めるだけでも様々な要素がイモズル式に出てきます。床下機器は面白いですよ。