今回は2011(平成23)年まで活躍し皆さんのご記憶にも新しい急行用車両2000系を取り上げてみましょう。
この系列はは1970(昭和45)年に阪神初の新製冷房車として登場した電機子チョッパ車7101形-7001形9編成36両と抵抗制御車7801形-7901形6編成12両を種車に更新改造したものです。改造は1990年に開始され、車番末尾01から12までの6編成は7101-7001形と7801-7901形を種車に、末尾13から16までの2編成は7101-7001形のみを種車に組成されました。形式は先頭Tc車(1,6号車)が2201形、制御器を搭載するM車(2,5号車)が2101形、補助電源装置を搭載するM’車(3,4号車)が2001形となり、Tc-M-M’の3両ユニットを背中合わせに連結した6連となりました。
福島付近の地上線を走る2000系トップナンバー2201-2202。震災により後述するスカートが取り付けられることなく廃車された。LEDの車内案内装置未搭載であった(1993年)
本系列の特徴は制御装置に回生・抑速付の界磁添加励磁制御装置を採用したことです。当時、界磁チョッパ制御方式の8000系が増備中でしたが、2000系は在来車の改造であるため、直巻電動機が流用できるメリットがあり、本方式の採用に至りました。また制動装置はTcがHSC電磁直通、Mが電空併用のHSC-Rです。車体は種車のものを更新し、前頭部は他系列との併結を前提としないため貫通幌はなく、同時期に施行された普通系車両の固定編成化に準じたものです。内装は化粧板が8000系(タイプⅡ・Ⅲ)と同じベージュ系ドット模様となりました。
2000系走行サウンド(Tc車2211号,準急・千船~梅田:silky_jetさんご提供)
2000系走行サウンド(M車2111号,快急・三宮~西宮:silky_jetさんご提供)
7101-7001形出自の車両が履く溶接組立式のFS-341。7801-7901形出自の車両は鋳造台枠のFS-341で、溶接組立式の車両も後年一部が鋳造タイプに交換された。
添加励磁制御方式を採用した三菱電機製ABFM-118-15-MRH主制御器
改造工事は1993(平成5)年まで続けられましたが、途中での設計変更としては、1991年の2203-2204以降では8000系タイプⅣと同じく側引戸上部にLED式の案内表示装置が取り付けられ、2211-2212以降では側引戸が8000系第タイプⅡ同様の内側に化粧板を貼ったタイプに交換されています。また2213-2214以降では種車の関係で側窓がユニット式でした。
種車由来の「片寄り目」が特徴だった2201形2210(1994年)
2211-2211以降では側引戸が8000系と同タイプになり、扉窓がわずかに大きい(1998年)
震災被災
1995年1月に発生した阪神・淡路大震災によって、2201-2202が神戸地下線内元町付近で下り急行として運行中に脱線し全損した他、2207-2208が御影留置線から御影駅1番線に引き上げたところで脱線、また2211-2212が石屋川車庫11番線で、2213-2214が同7番線で、2215~2216が同9番線で被災、脱線しました。2201-2202は全車廃車となり、2213-2214と2215-2216では比較的被害が少なかった車両を組み合わせて、2215-2113-2015+2016-2116-2216という編成になり、2213と2013+2014-2114-2214、2115は廃車されました。その他の被災編成は修繕の上、復旧しています。
2号車に2113を組み込み変則編成となった2215-2216(2001年)
スカート取付
1994年頃から先頭Tc車2201形にスカートの設置が始まり、震災後に全車完了しています。
パンタ撤去
元々2000系2101形には2号車にパンタ2基、5号車にパンタ1基が搭載されましたが、震災後に2号車の神戸寄りパンタが撤去されました。これに先立ち、当該パンタを降下させて運行する姿が見られました。
2号車神戸寄りパンタを降下させて運行中の2203-2204(1995年)
震災後も6編成が活躍を続けましたが、新系列車両1000系の登場や阪神なんば線開業に伴う車両需給の関係から2008(平成20)年から2011(平成23)年にかけて順次廃車となりました。
最後まで活躍した2207-2208。先頭部の連結器はバンドンから回り子式に交換されていた(2010年)
【余談】当初、本系列は「4000系」となる予定だったそうな。